読みたい方向から賞を選ぶ
文学賞の名前は知っていても、どこから見ればよいか迷うことがあります。 よみどきでは、純文学の受賞作を探す入口として芥川賞、物語の受賞作をたどる入口として直木賞、書店員が選んだ年ごとの順位を見る入口として本屋大賞を分けています。
最初から一つの賞に決める必要はありません。 言葉や表現へ寄りたい日は芥川賞、物語に長く浸りたい日は直木賞、同じ年に書店で支持された作品を順位から比べたい日は本屋大賞。 その日の読みたい方向に近い入口を一つ選びます。
同じ回の作品を見比べる
受賞という結果だけを見ると、選択肢は一冊に絞られます。 しかし、同じ回の候補作には、同じ時期に選考の対象となった別の入口があります。 あらすじや選書理由を並べ、今の関心に近い作品を選べば、受賞作から外へ自然に広がります。
第175回芥川賞では、受賞作『ゾンビ回収婦』とともに、『アンチ・グッドモーニング』『ソリティアおじさんがいた頃』『悪い血』『丹心/まごころ』が候補作として並びます。 第175回直木賞では、受賞作『けんぐゎい』と、『多類婚姻譚』『#台所のあるところ』『見えるか保己一』『青天』を同じ回から確認できます。
候補作から選ぶことは、受賞作の評価を退けることではありません。 一つの選考に集まった作品の違いを、本を選ぶ余地として使う読み方です。
記憶に残る年代へ戻る
読みたい年が決まっていないなら、自分の記憶を手がかりにします。 学生だった頃、働き始めた頃、よく書店へ通っていた頃。 文学賞ページの受賞記録は年代ごとにまとまっているため、作品名を眺めながら、その頃に読まなかった一冊を探せます。
たとえば『海の見える理髪店』は第155回直木賞の受賞作で、よみどきでは平日夜に一編ずつ読める本としても紹介しています。 賞の記録から見つけたあと、現在の読む時間に合うかを本の詳細で確かめられます。 年代は過去を懐かしむためだけでなく、今の生活へ作品を連れ戻す入口になります。
記録から一冊へ移る
回や年代から気になる作品を見つけたら、書名、著者名、あらすじの順に確かめます。 詳細ページがある作品では、読む体力、積みやすさ、向いている読者まで見て、今の一冊にするかを判断できます。 詳細ページがない作品も、回と著者名を記録しているため、店頭で探すための手がかりとして残ります。
- 賞を一つ選ぶ:表現、物語、年ごとの書店員の支持から、近い入口を決める。
- 回か年代を開く:最新だけでなく、同じ回の候補作や記憶に残る時期を見る。
- 二作を比べる:受賞の有無より、あらすじと今の関心が重なるほうを残す。
- 読む場面を置く:本の詳細がある場合は、読む体力と最初に開く時間を確かめる。
文学賞は、一冊の正解を教える印ではありません。 作品が同じ回に並んだ記録と、長い時間の中で受賞作が残ってきた道筋を見せてくれます。 本屋で見覚えのある書名に出会ったら、その作品がいた回へ戻ると、隣にもう一冊の候補が見つかります。
まず入口を選ぶときは文学賞から選ぶへ。 芥川賞、直木賞、本屋大賞の三つから、回と年代をたどれます。